経済産業省は公式Xで「イラン情勢の直接の影響はありません」と発信し、トイレットペーパーの買いだめを控えるよう呼びかけた。だが、この“安心してください”というメッセージは、本当に安心材料になっているのだろうか。
原料が物理的に存在していることと、それを経済的に調達できることはまったく別の問題だ。
日本は災害大国。普段からストックしている人も多い。だがそのストックがあることが基準となりストックが減ることを許容できなくなる。そして買う。それを買い占めという。
何かあった時のためにストックしている。今はその何かあった時。アメリカがイランを攻撃した。お陰で物流が滞り物価が上がる。
何かあった時のためにストックしている物の出番だ。だがそのストック量が減ることが許容できなくなり、イライラし、いてもたってもいられなくなり、買い溜める。
企業は慈善事業ではない。原料価格が高騰すれば採算は一気に悪化し、たとえ倉庫に原料が積まれていても、製造ラインは止まる。供給側が将来のリスクを見越して出荷を絞ることもある。つまり「原料がある=供給が続く」ではない。
さらに、政府が強調する「2ヶ月分の備蓄がある」という説明も、冷静に考えれば不安を消すどころか、むしろ不安を増幅させる。
2ヶ月後はどうなるのか。海峡封鎖がいつ解けるのか。流通は維持されるのか。
その先が見えないからこそ、人々は“念のため”買い足す。これは人間として自然な行動だ。加えて、もしガソリンが不足すれば物流は止まり、店頭に商品が届かなくなる。そのとき政府に「想定外でした」と言われても、国民は納得できないだろう。
結局のところ、こうした「落ち着いてください」というニュース自体が、逆に買い占めを誘発している面がある。
“問題ありません”と繰り返すほど、「実は問題があるのでは」と疑念が生まれる。注意喚起のつもりが、結果として不安を煽る。
実際、今回の報道を見て買い足した人も少なくないはずだ。情報の出し方ひとつで、社会の空気は簡単に揺れる。だからこそ、政府やメディアには単なる“安心アピール”ではなく、経済の仕組みやリスクの実態を踏まえた説明が求められている。


コメント